2007/07/28 6:54:29
◎ドストエフスキー「カラマーゾフ兄弟」と歴史的「大虐殺」のこと




◎ドストエフスキー「カラマーゾフ兄弟」の「大虐殺」のサブ・エピソートは西洋と東洋の歴史認識の異なりを教示します。 ---------------
 イワン.フョードロヴィッチは続けた。「あそこでは、つまりブルガリャではトルコ人やチェルケス人が、スラヴ族の蜂起を恐れて、いたるところで悪虐の隈りをつくしているんだそうだ。家は焼く、人は斬り殺す、女子供には暴行を加える、捕えられた男たちは耳を塀に釘づけにされたまま朝までほったらかされて、朝になると絞首刑にされる等等というわけで、どれもこれも想像も及ぱないくらいなんだ。実際、人間の残忍な行為をよく『野獣のような』と言うけれど、これは野獣にとってはおそろしく不公平で、しかも失礼な言い草だよ。野獣は決して人問のように残酷にはなりえない。あんな芸術的な、技巧的な残酷なまねなんかできるもんじゃありゃしない。虎はただ噛むとか、引き裂くとか、そんなことしかできるもんじゃない。人間の耳を一晩じゅう釘づけにしておくなんて、たとえ虎にそんなことができるにしても、とてもそんなことは考えつけるもんじゃないよ。ところがこのトルコ人ってやつは子供を苦しめることに官能的な喜びを感じているんだからな。短刀でもって母親の胎内から胎児をえぐり出すなんてのは初歩のほうで、ひどいのになると、母親の目の前で乳飲兄を空中へ放り上げて、それを銃剣の先で受け止めて見せるというんだ。母親の見ている前でそれをやってのけるというのが、主としてやつらの快感をくすぐるわけなんだね。
---訳 小沼文彦-----
 これは真に、旧日本軍の「三光」のありさまです。東洋にては、往々にして旧日本軍の特異な残虐さと説かれるそれも、、「カラマーゾフ兄弟」が必読書の欧米の文化では、「その歴史的事実、ドストエフスキーが「カラマゾフの兄弟」で語っていたね。戦争は残虐だね。」風な普遍的な感想が一般的なのかも知れません。



                                                                                     2007/07/28 6:45:40
◎ドストエフスキー「カラマーゾフ兄弟」と芥川龍之介「蜘蛛の糸」のこと




◎ おなじみの芥川龍之介「蜘蛛の糸」(大正7年)は「カラマーゾフ兄弟」の<1本のネギ>エピソードがベースです。
---------------
こういう話なの-『むかしむかしあるところに、それはそれは意地の悪いお婆さんがおりましたが、とうとうそのお婆さんは死んでしまいました。ところがそのお婆さんは生きているうちになに一ついいことをしませんでした。そこで悪魔はお婆さんをつかまえて、火の海に投げ込んでしまいました。お婆さんの守護の天使は、神様に申しあげるようななにかいい行ないが思い出せないものかと、じっと立って考えました。やっとそれを思い出したので、あのお婆さんは畑からお葱を抜いて女の乞食にやったことがありますと、神様に申し上げました。すると神様はお答えになりましたそれではお前がひとつそのお葱を取って来て、火の海のお婆さんにさしのべてやり、それにつかまらせて引っぱってやるがよい。うまく火の海の外へ引き出せたら、お婆さんは天国へ行かしてもよい。だがもしもお葱が途中で千切れたら、お婆さんはいつまでもいまのところから出られないのだぞ。そこで天使はお婆さんのところへ走って行って、お葱をさしのべてやり、さあ、おばあさん、これにつかまって引っぱるんだよと言いました。そして天使はそろそろと引っぱりはじめました。いよいよもう少しで引き上げられるというとき、火の海にいたほかの罪深い人たちが、お婆さんが引き上げられようとしているのを見つけて、自分たちも一緒に引き上げてもらおうと思って、みんなしてそのお葱につかまりはじめたのです。ところがお婆さんはそれはそれは意地の悪い女でしたから、《引いてもらっているのはわたしで、お前たちじゃないよ。これは私の葱で、お前たちのじゃないよ》と言って、みんなを足でけとばしはじめました。するとお婆さんがそんなことを言うが早いか、お葱はぷつりと切れてしまいました。そしてお婆さんはまた火の海に落ちて、いまでもそこで燃えているのです。天使は涙を流して、帰って行きましたとさ』これがその讐え話なのよ、アリョーシャ、いまでもちゃんとそらで覚えているわ。だってこのあたしは、その意地の悪いお婆さんなんですもの。
------訳 小沼文彦-------
 「蜘蛛の糸」が収録された、芥川龍之介「三つの寶」改造社/昭和3年刊は今日、ほるぷ名著復刻・日本児童文学館にで、手軽に愉しめます。



                                                                                     2007/07/28 6:40:41
◎ドストエフスキー「カラマーゾフ兄弟」と全1冊本




◎長編ドストエフスキー「カラマーゾフ兄弟」は大部のせいで分冊出版が多いですね。全1冊本は、今日、入手しにくいようです。「ドストエフスキー全集」にても分冊が殆どです。肝心の「ドストエフスキー全集」でも分冊傾向。筑摩書房版が全1冊にしています。ここでは「ドストエフスキー小説全集」筑摩書房/昭和52年刊の1冊本を掲載してみます。